34.聖少女 倉橋由美子

交通事故で記憶を失った未紀は、ぼくに事故前に綴ったノートを手渡し解読してくれるように頼む。そのノートには未紀のパパに対する狂おしい愛が描かれていた。

 

このノートには謎が多い。日記にしては抽象的で具体的なことが書かれていない。パパと父は同一人物なのか。どうして未紀とパパは愛し合うようになったのか。本当に血が繋がっているのか。

そして書いた本人が記憶をなくしていることがノートの謎をさらに深めている。

 

物語の中盤で未紀(はパパと)とぼく(は姉と)はどちらも近親相姦を経験していることが判明する。

近親相姦というものに対してザラついた嫌悪感を覚えるのは私だけだろうか。

未紀は「理解できないものを人は悪としてきたから近親相姦も悪になった」と言っていたが、それなら殺人や強盗だって悪である。しかし何というかそれらと近親相姦に対して覚える悪の種類が違うように感じるのだ。

なぜそう思うのか理由は説明できないが、近親相姦に関して一つだけ言えるのは、血の繋がった相手とそこまでの関係をもってしまうと、おそらくもう二度と他者と親しくつながることができないだろうということだ。

 

最後はぼくも未紀も現実を放棄し他者との関わりを止める。

未紀は少女のような純粋で一途な愛を持ち続け「聖少女」となるのだ。

難しい本だったけど面白かった。