35.アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス

この本は好きで何回も読んでるけど読むたびに感想が変わる。

前読んだ時は天才になったチャーリーが孤独で自己中心的で傲慢になってて、その性格がまるで自分みたいだなって思った。

 

今回はチャーリーは天才ではなくなってしまったけど、人間として本当に大切なことを得ることができたんだな、よかったって思った。天才だった時は、思考の中心が常に自分に向いていて、周りが自分を馬鹿にしたり気持ちをわかってくれないことに腹立たしさを覚えていた。だが最後には笑われてもいいって思えるようになったし、周りのことも大切に考えるようになった。

 

ダニエルキイスがこの本を出版社に持ち込んだ時、最初は「最後が暗すぎる。チャーリーが天才のままキニアン先生と結婚するストーリーにしてくれたら出版する」と言われたそうだ。ダニエルキイスは悩んだが、親友に「ストーリーを変えたら脚を折る」と言われて、別の出版社に持ち込んで出版できることになったそうだ。ストーリーが変わらなくて本当によかった。

 

確かにこの話を「利口であればたくさん友達ができると信じていた知的障害者は、手術で天才になった。しかしそれによって、友達もなくし孤独になり、最後は天才ですらなくなってしまう」という外面的な部分だけどみたら、バッドエンドだと思うだろう。しかし私はチャーリーは最後に「得た」と思っている。それは目に見えるものではないし、他の人からみたら瑣末なものかもしれない。天才である方がずっといいと思うかもしれない。でも私は優しくて温かいチャーリーが好きだ。だから何回も本を開いてチャーリーに会いに行くのかもしれない。