3.ペスト カミュ

カミュは異邦人しか知らなかった。異邦人読んだ時は印象には残るけど、だからなんだくらいにしか思ってなかった。だからペストを読み始めた時もそんなに期待していなかったんだけど、予想以上に良すぎて驚いた。

 

あらすじ

舞台はカミュが育ったオランの街。オランの人々は熱心に働き、家族や友人を愛している普通の街の人だった。日々金を稼ぎ、生活することに精一杯で何かを積極的に学んだりするような向上心がある人々ではなかった。彼らの街である日を境に血を吐いたネズミが大量に死んでいるのが目撃される。それは紛れもなくペストの前兆だった。しかし学問を究めたり、歴史から学んだりする人が少なかったため、不可解な出来事として片付けられていた。そのうち人が死に始め、街はついに閉鎖されるのであった。

 

最初オランの街がいかに凡庸かという話から始まる。人々は日々働き、人を愛する。それが精一杯で何かを学び警句を唱える人がいない。ただ普通の人々ということが強調される。最初は別に良い街じゃないかと思った。でもこの普通の人々というのがキーポイントなのだ。彼らが学んでこなかったせいでペストの前兆のネズミの大量死にも気づかなかった。人が死に始めた時も特に気にも留めていなかった。自分の愛する人以外の死は特にどうでもいいのだ。

そうしてる間に、ついに門が閉鎖され街から出られなくなる。今置かれている状況が正確にわかる人だったらすぐに暴れ出し気が狂っていただろう。しかし、彼らは無知ゆえに門の閉鎖は愛する人との突然の別離の悲しみしかもたらさなかったのだ。

しかし時が経ち死者数が多くなっていき、いつまでも閉鎖された門をみて物事の深刻さに気付き始める。門が閉鎖されているということは愛する人が街に帰ってこれないだけではなく、自分も街の外に出られないということだ。また街の外からの物資が断たれるということだ。つまり物資不足で遠くない未来に人々が争わなければいけないことを意味していた。また外部から人や物資が来ないため、ホテルや店が軒並み店じまいを始め、仕事がどんどんなくなっていった。一時的なものですぐに門が開かれると人々は最初思っていたが、ペストが収束するまで決して開かれないことを悟り始める。ペストが収束するということは、ペストを完全に撲滅させるか、全員死ぬかしかない。そのことを知り、人々は落ち込むがやがてペストを撲滅させるために立ち上がるのだ。

 

自分の街を題材にしてるからか舞台設定がリアルで、どんな人々なのかも容易に想像できる。そしてペストに対しても無知さゆえにあまり恐れていない。しかし知識があってペストがどれほど恐ろしいものなのかを知っていたら早くに狂っていただろう。ここらへんの知ることの怖さ、知らぬことの怖さの描写がとてもよかった。

 

450ページいかないくらいの分量だったけど1週間くらい読むのにかかった。その間ずっとすごいすごいって思ってた。自分の人生で一番好きな本ベスト10冊に余裕で入るレベルだ。

図書館で借りたやつだったから自分でも買おうと思う。