12.butter 柚木麻子

暇である。

台風で仕事に行けなくなってしまった。わずか3ヶ月くらいの間に関西は、地震、大雨、台風、台風で大打撃を受けている。

そのたびに会社に行けず、遅刻したり休んだりしなければいけない。しょうがないけど仕事が溜まってるので明日から残業しなければならない。悲しみ。

今台風がどこにいるのかわからないが、外は大荒れである。雨はそこまででもないけど風が強い。ベランダの物を全てしまい、どこにも行けず自宅待機している。これ書いたら勉強しよう。

 

柚木麻子のbutterを読んだ。この本は木嶋佳苗をモチーフにした小説だ。木嶋佳苗とは首都圏連続不審死殺人事件の犯人とされている人だ。木嶋佳苗は北海道出身で上京し、複数の愛人による援助で生活する。そしてその何人かが、不審死を遂げており、多額のお金が木嶋佳苗のところに振り込まれていたのである。木嶋佳苗は殺人犯というより別の理由で有名になっている。それは「なんでこんなブスでデブが、多くの愛人に貢がれていたか」と疑問に思った人が多くいたからである。そして法廷で自ら赤裸々に性的な話題を出したりするのも話題になっていた。木嶋佳苗が世間で言う細くて美人な人だったら正直ここまで話題にならなかったと思う。

 

この本の主人公は里佳という大手週刊誌会社に勤める女性記者である。その会社で里佳は記者唯一の女性として働いている。里佳は背が高く棒のように痩せていて、あらゆる欲がなかった。特にご飯に関しては太るのも嫌だし、食べたいものもなかったしで、料理は全くできなかった。他社の女性記者は枕営業のようなことをしてネタを取ってきていたりしたが、里佳は仕事で女性を使うのに激しい拒否感を覚え、なるべく女性を出さないようにしていた。プライベートでもその姿勢は変わらず、恋人にでさえうまく可愛く甘えることができない有様であった。

 

この本の主人公里佳はいわば女性というもののあり方がうまくわからない人である。女性として「家庭的、包容力、母性、優しさ」を求められるのに激しい嫌悪感を抱くものの、男性に優しくされたい、女性としてみてもらいたいという思いは拭えないでいる。でもそのために女性らしさを出すのは嫌だという状況である。

 

そんな里佳が興味を持ったのは梶井真奈子という連続不審死事件の犯人と疑われている女性である。彼女はブスでデブだ。しかし家庭的でたくさん料理を作り、多くの愛人のお金で生活をしていた。しかし裁判などで梶井「私は魅力的な女性だから殿方に愛されて当然」と主張する割に、その愛人だった人達は周りの人に「あんなブス、料理がうまいから付き合ってるだけ」と梶井を貶める発言をしていたことに里佳は疑問をもった。里佳は梶井のインタビューをすることができれば、自分の女性としての迷いに何か答えが出るのではないかと刑務所に足を運び面会を図ろうとする。

 

ここで梶井と里佳は対照的に描かれている。里佳は世間的に見れば強者である。美人でモデルのようにスタイルがよく、大企業に勤めバリバリ働いている。一方梶井は世間的に見れば弱者である。見た目もブスでデブでダサい。大学を中退し、自分で生計を立てることができず、歳上のモテない男性にお金を出してもらい生活をしている。

しかし里佳は梶井に女性として負けていると思っている。

 

面会が許されるようになると里佳は梶井の観察を始める。そんな里佳に梶井はバターの美味しさについて熱く語る。里佳はバターなどあまり食べたことがなかったが、梶井と面会を続けるため梶井の勧める物を次々に食べていく。「世の中にはこんなに美味しい食べ物があるのか」と里佳は感動する。そして美味しい物をたくさん食べどんどん太っていく。それと比例するように里佳はどんどん梶井に心酔していく。

 

最後に、梶井の裏切りにより里佳は身も心もボロボロになる。しかし周りの助けにより元気を取り戻していく中で里佳は「梶井は相手を傷つけ組み伏せることでしか人間関係を築けないのだ。だから友達がいない。でも可哀想とは思わない。それが梶井の生き方なのだろう」と気づく。だんだん梶井について客観的に理解できるようになり、それに比例して自分を認められるようになり、自分も周りも大切にできるようになる。

 

私の父親も梶井のように人と対等に関係を結ぶことができない人なので、ああ梶井みたいな人いるよなーって思う。別にそれがその人の生き方だとしたら否定はしないけど、自分を傷つける人を周りにおいておく必要はないなって思う。そんな人話してても楽しくないしね。

私の父親も、私達家族と別なところで幸せになってくれればいいと思う。

 

台風やばくなってきた!

おわり